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職人暮らし/原田多加司




職人暮らし/原田多加司(2005) (意約)
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●キリのいい止め所~すこし先までやっておく
仕事はキリのいいところで終わらせず、もうすこし先(5~10分)までこなすようにしておく。翌日はその数分をとっかかりにスムーズに入れる(切りよく終わらせるほうが、前日の作業を思い出すのに時間を食う)。 60


●軒先の形状~日本人好み
東南アジアなどの建物では、軒先全体を弧形に反らせたものが多いが、日本の建物は奈良時代までは水平が原則で、それ以降も中央のかなりの部分が水平に近い。隅の反りも中華文化圏ほど極端でなく、総反り、真反りといってもあくまで雨仕舞の必要性と、見る者の視線を化粧部分に誘導するためのものであって、軒先の直線は日本人好みともいえた。 68


●職人として生きていくなら ~不得手は先送りする
修業にも身が入らず、はやく一人前の職人として扱われようとするあまり、肝心のところをはしょってでも進もうとする。仕事をはやく覚えたいのは誰でも同じだが、これでは結果としてかえって遠回りをしていることになる。職人としての修業は一発勝負の試験のようにヤマをかけられないし、毎日が試されているようなものだ。
小手先の器用さもあまり関係がない。器用なタイプは先が見えたり、修業をバカにしがちで、反対に不器用だったりすこし鈍感な子が辛抱強かったりする。一〇年ほどの修業レースを走りきるのは後者のタイプが多い。
「好きこそ物の上手なれ」というように、不得手なことで、腕を上げたり、職場に貢献しているような例は聞いたことがない。
職人にとって短所の是正は、一人前になって少し余裕が出てきてからやればよい。「単によいと思ったことをやって、悪いと思うことはしない」程度でもいい。やがて、短所は少なくとも気にならない程度まで改善されるはずだ。 79、119


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器用で覚えはいいが飽きっぽくて何も身に付かないタイプだと自己分析してて、20代まではそうだったかもしれないが30代のいまは違う、不器用で下手糞で飲み込みが悪く、一度やったこともすぐに忘れる体たらく……手仕事の職人になるなんて無理だ、機械加工にしたって熟練の技が要る。ここもおれの居場所はなかったのか、と暗い気持ちから脱せなかった2015の夏。光明が見えたきっかけは『片岡球子の日曜美術館』だったが、この本も励ましてくれた。
不器用で下手糞で飲み込みが悪く……とはいっても全てが出来てないわけじゃなく、授業にも実習にもついてはいってる。かつてあった運動神経や感覚の深さがいまのおれにないことを嘆き、嘆きのぶんだけ落胆が大きくなる。このデフレーションによって自尊心が削り取られ、なにもかも出来てないかのような心理状態に落ち込むが、ここが踏ん張りどころだ。苦手なのは細かな細工であり、設計図や予定通りに事を進めることで、道具にしてもノコやノミははじめたころよりは使えるようになってきた。素人裸足でしかないが、変化はある。
「短所の是正は一人前になってからでいい」と聞けば無用な力が抜け、やれることをやろうと集中が甦る。

翌日の作業に入りのいいやめどころは気にかかっていた。原田さんいわく「5~10分くらいさきまでやっておけば」次の日の入りがスムーズらしいので、取り入れてる。
武道家の甲野さんは「達成感や満足感が生じるまえで止める」といって漫画家の井上雄彦を驚かせていた(くたくたになるまでやる→やらないと原稿が終わらないらしい)。自分にあった止め時があるんだろう。見つけたい。



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Comments 3

原田多加司

ご無沙汰しています。新著が出ましたので、過去の分も含めて「著作一覧」とさせていただきます。

1997年 『近世屋根職の研究』(文化財匠会)
1999 『檜皮葺と杮葺き』(学芸出版社) 奈良文化財研究所・鈴木嘉吉賞
2002 『檜皮葺 職人せんとや生まれけん』(理工学社)
2003  ものと人間の文化史112『屋根 檜皮葺と柿葺』(法政大学出版局) 日本民俗建築学会・奨励賞
2004   中公新書1771『屋根の日本史』(中央公論新社)
2004   近江八幡の歴史第1巻『街道と町並』(近江八幡市)共著
2004 『伝承』(公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会)
2005  ちくま新書562『職人暮らし』(筑摩書房)
2005 歴史文化ライブラリー186『古建築修復に生きる』(吉川弘文館)密教文化賞
2006 近江八幡の歴史第2巻『匠と技』(近江八幡市)共著
2006 『屋根の見方と見せ方』(不動産流通研究所)
2007 『職人にみる修練』(金子書房)
2009 『屋根職人の現在そして未来』(日本屋根経済新聞社)共著
2014 『雨と生きる住まい』(LIXIL出版)共著
2016 『日本文化事典』(丸善出版)分担執筆
2017 『匠の技の伝承』(公益社団法人 日本教育会)

2017-11-09 (Thu) 12:26 | EDIT | REPLY |   

bibo709

こんばんは。

原田さん、はじめまして。録主のbiboと申します。直接のお声かけ、光栄です。
『職人暮らし』の読書を通じ、銀行員を経て職人になられた原田さんの経歴、仕事への取り組みや心がけを教わり、励まされています。
怒られたり、失敗ばかりの日々ですが、できるようになったことを伸ばし、関心のある領域を広げながら前向きに取り組みたいと思っています。

2015-12-03 (Thu) 21:48 | EDIT | REPLY |   

原田多加司

はじめまして。

拙書を丁寧にお読みいただいているようで、感謝申し上げます。職人の前は銀行員でしたので、最初はなかなか一筋縄ではいきませんでした。でも、職人というのは面白いものですよw

2015-12-01 (Tue) 10:57 | EDIT | REPLY |   

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