バガボンド和歌山

三十路ピーターパンの着流しスケッチ

名工に学ぶ/遠藤盛男 編著

2   0





名工に学ぶ/遠藤盛男 編著(2003)
------------------------------------
永松正次(建具製造工)
今の時代にこんなことを言うと笑われるかもしれませんが、ドアとカギの生活は何となく心が狭められます。 28


八幡宗之助(畳工)
何でも作業ごとに確認してから始めることです。(鉄道の)駅員さんが指差し確認をしますよね。例えばものを切る場合でも、すぐに切らずに必ず確認してから切るんです。 44


杉山澄夫(雄勝硯職人)
何を彫るか、絶えず題材を考えています。畑に行っても自然を見るときも「何か作品にならないか」という発想・着想の目をもって眺めるんです。 56


平野重一(酒類製造工)
―― 若い人たちの意気込みはいかがですか。
この道に入って、三、四年経つと迷いがでてくるようですね。「今まで何をやってきたのか分からない」などと、方向転換のことを考えたりします。そんな時は、腹を割って話し合ってみるんです。すると、その迷いがやる気と裏表になっている、と思えるところがあるんですね。そして、悩みが吹っ切れると今度は本気で仕事に取り組みますね。やっぱり根気と努力ですね。それさえあれば、技は自然に身についていきます。 69


千坂洋一(和服仕立職)
―― 若い人を指導される時には、どのようなことを言われるのですか。
慣れないことをやるのだから、できないのが当たり前という気持ちを持たせるんです。生徒はそれぞれ個性が異なりますから、せっかちな人もいれば、のんびりしている人もいます。ですから、相手より遅いとか早いとか、決して人と比べるな、と言ってます。速くできても間違いがあっては何もならないし、遅くても確実であればいいんです。最終ゴールがきちんとそろえばそれでいいんですね。自分が覚えるためにこの学校に通っているのだから、他人と比較して、「自分は向いてない」とか、「もうダメだ」などと思うなと、いつも言っています。 94



------------------------------------


生活には慣れたが、学校がきつい。もっと楽だと思ってた? いやそうじゃない。心に甘えがまったくないなんて言わないが、おれだってこの年齢で東京暮らしに区切りをつけ、体ひとつで600kmも離れた未知の土地に越し、中卒の子供たちとおなじ教室で一から学んでいる。職人や修業期間を舐めてたり気持ち半分だったり、興味本位で遊びにきてるんじゃない。にも関わらず、おれの担任は態度も口も横柄で上から目線、嘲笑と罵倒を浴びせてくる。おれも真に受けて向かい合うタイプなので、頭にくれば口論寸前の緊張がみなぎるが、ここでぶつかっても損するのはおれだ、クソずるいやりかたしやがって畜生……と堪えていると「はやくやれ、いそげ、まちがうな、アホか、ゴミやな」の心無い言葉で突かれる。軍式、ナチス式とはこのようなやりかたか・・・・・「まずはじめにできないことをやらせ、自尊心と自意識を叩き潰し、恐怖感と命令によって人格矯正しながら効率よく技術を習得させる」という教育法や横柄な教師の態度に辟易し、一方で技術もなかなか向上しない。二〇代とは違っている。出来のよい同級性の溌剌とした取り組みに心乱れ、身体的な限界にも打ちのめされる。なかなか、明るいものが見えない。暗がりに落ちていれば、なおさらそうだ。

さきにメモした『職人暮らし/原田多加司』、それと宮城の名工さんたちがインタビューに答えるこの一冊『名工に学ぶ』が勇気をくれた。親方が、師匠が、和装職人の千坂さんのように若い職人を育てることに理解のある方だったら、どれだけのびのびと前向きに向上していけただろう。いや、本のなかで出会えたことを幸運と思おう。平野重一さんのお話も、とくに書き物についての訓話として刺さった。

こないだは大阪の展示会で川端さんという木工職人と話ができ、「うまくなんて出来ないですよ。刃物も研げば丸くなるし、道具も満足に使えるようにならない。師匠には呆れられることの連続です。でも、やり続けられるかどうか。続ければ技術はついてくるし、作品も増え、経験が積める。おのずと職人になっていきます。やっぱり、二度、三度 ―― それまでの殻を破るブレイクスルーがないと独り立ちは厳しいけれど、まずはこの一点、続けられるかにかかってると思います」とアドバイスをもらった。

諦めていないから人や言葉に出会え、導かれたり後押しされるはずだ。コネと下心はびこる出版業界のうちむきな態度、関係者の肉厚な背中にはじき返され続けた数年間も、ワセブンに喰らった仕打ちも、甦るために必須の死だった、走り続け、壊れるまでやったからこそ、挫折できた ―― 精神的に潰されて殺されて真白になれたのは幸運だったんだと感じられるようになってきた。あとは、ここから立ち上がればいいだけだ。

続けたい。実習も、小説も。
存在のスケールの縁まで到達する円を描きながら生きていたい。



関連記事
スポンサーサイト

Category :

2 Comments

says...""
動く、見つけることができる体で産んでもらえた幸運を噛み締め、怒気でドキドキ、生きます。

2015.10.21 15:13 | URL | #- [edit]
says...""
生きるだけでも生かされて終われなくて何か見つけるだけでも虫の息
怒る気があればとりあえずあしたがくる
2015.10.12 21:59 | URL | #- [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://bibobibobibo709.blog.fc2.com/tb.php/94-d62936b5
該当の記事は見つかりませんでした。