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【 トワイエ0002 】みずうみ

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あなたは女性です。女性、それも高校生。

学校からの帰宅途中、担任の男性教諭が尾けていて、それはバレバレの素人尾行です。

夏 ―― 下校時刻とはいえ気温は高く、歩くだけで汗が噴き出ます。制服のワイシャツ、その背中にも汗が滲み、肌に張り付いた部分は肌が透けている。下着の紐の色も見えているかもしれません。

担任がジィっと見ている。あなたの汗まみれの背中を見据えながら距離を取り、尾行を遂行します。

あなたは不良生徒じゃない。担任に何事かを相談した覚えも無ければ、とくべつ可愛がられてもいない。もちろん、部活動の顧問は他の教師ですし、あなたの両親は学校関係者に生活指導や監督を頼みません。

にもかかわらず、なぜかあなたは担任から尾けられている。担任には、あなたから離れる気配はありません。

あなた、校門を出るときから担任の存在に気づいてはいましたね。でも、早足にすれば担任を気にしているようで嫌で、かといって歩く速度を緩めたら追いつかれてしまうでしょう。

追いつかれる……その悪寒は鬼ごっこで逃げているときのゾワゾワした感じを思い出させます。タッチされれば、それっきり。あなたが鬼。背中にベタっとした手のひらの感触がつき、魂の表に触れられた心地がしそうで絶対に避けたい、逃げたい……つぎは私が鬼? なにそれ、意味わかんないし……怖いし。そうですよね。担任に背中を触られるなんて、考えただけで怖気がするでしょう?

あなたは汗を拭うのも忘れ、こめかみには濡れ髪のほつれ、あつい息をこぼしながら自宅の門をくぐります。教師は電柱の影から覗いている。が、じっとしてはいない。すり足で近づいて来ます。なぜか、そして、あなたは動けなくなります。いま、担任が背後に起立しています。

震える。いや、震えを曳くように歩いてきた……あなたの腕や腰、腿の内側はずいぶんまえから震え、痺れていたでしょう。そんな痺れと涙、下瞼に溜まった涙をけっして悟られないよう、あなたはなぜか(許せない)と思う。思えば思うほど身が凝り、泣きそうになる。首筋に生ぬるいものを感じる。シャツの張り付いた背中に、自分でない他の誰かの体温を感じる。あなたは息を吸って胎を決めます。そして振り返る。

「なんですか! 先生、なんの用ですか!」

詰問に不意を喰った ―― という素振りの男がニタニタと格好を崩し、こう言う。

「ああ……いやね、君のお父さんさ、水虫に詳しいね? 水虫の薬ね、ふふ。僕、水虫がきつくてね、一言さ、お父さんに聞いてはくれないか」

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くっそキモい!

川端康成の『みずうみ』読んでてサブイボたちまくり!











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川端みずうみ眠れる美女掌の小説康成

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