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『消え去りしもの』&『コーリング』岡野玲子


消え去りしもの/岡野玲子

作者本人があとがきで「(いろいろワケあってこの作品には)消え去ってほしかった」と述べている。
のちの傑作に比べたら<消え去りしもの>はストーリー展開に書き込みや説明が不足しているから? 
キャラクターに奥行きがないから? 
だとしても、なしにするなんてもったいない。
村上龍なら限りなく透明に近いブルー、村上春樹なら風の歌を聞け、阿部和重なら無常の世界、ポール・オースターならシティ・オブ・グラス、丸尾末広ならリボンの騎士、デビュー作には作家の萌芽がある、なんて云われる。岡野さんの『消え去りしも』も例にたがわず、漫画家としての秘められた大いなる資質の気配がある。
同時期に描かれた『ファンシイダンス』の<軽妙・滑稽・快活>、そして『消え去りしもの』が孕む<超常・怪奇・魔術・中世>。
複流はいわずもがな『陰陽師』という大河につながっていく。



コーリング/岡野玲子

『コーリング』には岡野さんの<ジェンダーという問題意識、ユニセックス的な無意識>や<人間と人間でない生物(動物・霊体・神獣)との並列関係>も見て取れる。
この作品はマキリップの小説が原作。


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妖女サイベルの呼び声/パトリシア A.マキリップ
1975年世界幻想文学大賞受賞作

サイベルに備わっている神獣を従える才気や、ほかの魔術師と比較にならないほどの魔力は、ファンタジーを構造させる要素であるし、実際に作品中でなんどか戦闘にも発動するけれど、彼女の才気や魔力はあくまでも存在としてのエッジである。これはたとえば現実世界に暮らす人間の<感性が鋭い>だとか<悲しみが深い>とか<上手に絵が描ける>や<嘘が付けないから人付き合いが苦手>のような人物的なリアリティなので、この作品にとってファンタジーというジャンルはいわばヴェール、ここに隠されるは<神秘的な女性=感じやすい人間=ナイーブなあたし>の投影を可能にする鏡である。




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和歌山県伊都郡かつらぎ町 世界遺産シンポジウム「祈りと共生の世界遺産」 岡野玲子記念講演会
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