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【 トワイエ0009 】山中先生への手紙

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山中先生、こんにちは。
先日、NHKの『人体』を見ました。
私は人の体の科学的な面には、あまり興味がなかったのですが、山中先生とタモリさんが司会ということなら、これは見なければ!と興奮しています。
来年の3月まで放送が続くなんて、長丁場ですね。
楽しみです。

先日、番組のなかで「癌検診は、いまのいままで、患部によって大掛かりな検査が必要だった。それがたった一滴の血液を調べるだけで、多くの癌の検診が済むようになりつつある」というお話がありました。

先生、癌の研究により、癌の治療技術の開発により、癌の存在意義は再定義されそうですか?

いま、癌という細胞は「生物を死に至らしめる悪いもの」とされるのでしょうか。
だとしたら、人間にとって癌という現象や細胞の謂れが、いままでとは違う観点で語られるようになるかどうか。
この点が、人間が癌を克服したかどうかを知らせるように思うのですが、いかがでしょう。

私は10年ほどまえからパニック障害があり、乗り物にのっての移動や、混雑した空間での行動が自由になりません。
障害が苦しい時期は、一刻も早くよくなりたかったし、元に戻りたかったのです。発作の連続で死にたいほど滅入っていました。5年も6年も同じ状態が続いて、先が見えない不安感で潰されそうでした。
それが、医療機関の助けや薬の力をかり、自分なりに病気の学習を続けてきたことで症状は軽減され、いまはずいぶんと落ち着き、暮らしも穏やかなものになりつつあります。まだ発作の恐怖は拭い切れず、社会生活が難しいときもありますが、どうにかバランスをとって暮らせています。

私はパニックを煩ったことで、さまざまなことに気づけました。
とくに、自分の弱点や考え方のクセに気づいたことが大きかったです。これにより、他人の弱さへの想像力が涵養され、おそらく、私は病気以前よりも、いまの自分のほうが、他人にやさしいと思います。
私は、昔の私よりも、今の私のほうが好きです。パニックがなければ、こうはなっていたなかったように思います。
パニックによって自分自身の性格、嫌いで疎ましかった性格が、そうではない方向に変化したのです。
煩わしく、疎ましく、死滅させたい対象でしかなかったパニック障害は、いまの私にとって、そのように一方的には括れません。
病気でありながら、病気に収まらない何かです。

先日放送された『人体』を見て驚きました。
臓器がそれぞれメッセージ物質を発し、血管を通じて会話している ―― 臓器同士がネットワークにつながっているなんて信じられませんでした。すごい。この発見は、生物にとっての臓器があらたな文脈で語られるようになった契機だっただろうと思いました。

そのあと、癌について考えたのです。
ひとりの患者にとっての癌は、私のパニック障害のように、おそらく、個人の闘病生活のなかで、その意味を変えていくことがあると思います。家族にとっても同じです。
それが、つぎに人類・人体というスケールで捉えなおされたとき、人間にとっての癌の意味は新しくなるのではないか。
医療技術が癌を根治させられるようになり、さらに、人体にとっての癌、人類にとっての癌が、生物にとっての癌が「死の元凶」という固定観念から解放されるような発見・医学的なデータ、研究結果がまとまる。ここまで到達すれば人間は癌を読み替えたり、もしかしたらポジティブな作用まで見つけのではないか。この再定義を癌の克服と呼ぶのかな、と想像しました。

山中先生、私は先生の活動や発言に力づけられています。
医者を挫折し、研究者として再出発したのち、先生にしか出来ない研究を成功させたところ。クールなのに、とことん走り続けられる情熱を秘めてらっしゃるところ。世界最高の研究成果と知性をお持ちでありながら、つねに優しく、柔らかく、患者さんやご同僚、若い研究者に言葉をかけておられる姿にも、私はうたれます。
お忙しい日々だと思います。
ご自愛ください。







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山中伸弥先生IPS放送タモリ人体スペシャル司会

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