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今市子『短編集と百鬼夜行抄』

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今市子
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今市子さんの『百鬼夜行抄』はすごいけれど、まずは趣のある短編から。


岸辺の唄
出版社: 集英社 (2002/5/24)



孤島の姫君
コミック: 188ページ
出版社: 朝日ソノラマ (2001/10)


砂の上の楽園 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

コミック: 212ページ
出版社: 朝日ソノラマ (1997/07)

それぞれにユニーク。
描画は少女マンガ的な繊細かつクールな描写。コマ割りもスムーズなので、どのページでもページをめくる手のスピードが落ちない。
今市子。短編集に描かれる人物は全然「イマイチ」じゃない。
共通するテンションや雰囲気を持っていて、今市子さんのサーガ性というか、宿命というか、こういうキャラクターを描かずにいられないんだろうなという必然性&デジャヴを多々、感じながら読書する。


懐かしい花の思い出

コミック: 207ページ
出版社: 朝日ソノラマ (1998/07)

ここに収録された作品のいくつもがプロじゃなかったころに描かれたというから、今市子さんはやっぱりイマイチじゃない。
ストーリーテリングがじょうずで、シナリオにもひねりがあり、ベタかなーと思わせるのも布石、終盤にひっくり返されてカタルシスに浸る。




代表作『百鬼夜行抄』のキャラクターはみな重層的/多面的に描写され、物語のなかでプリズム効果を発する。それはプロットを透過し、作品を昇華させる屈折だ。

水木しげるは悪魔をヒーローにしてみせ、宮本武蔵の宿命のライバル・佐々木小次郎を唖にしたのは井上雄彦だ。
で、今市子は?
今市子は、祖父が重用した妖怪を死んだ息子(主人公の父親)に篭らせた。

祖父×孫のカップルは、イノセンスとワンダーランドを描くには最適のコンビネーションだということは、数多の古典が教える。思春期物の作品を成功させる鍵は、主人公(だいたい中高生)のじーちゃん・ばーちゃんが際立っているかにかかってると言っても過言じゃない。

今市子さんはこのコンビネーションに「父親が死んでいて、さらに、じーちゃんが重用した妖怪をその父親に憑依」させた。アクロバティック。これは彼女の発明であり、テリングの世界における開拓だ。この点だけでも今市子×『百鬼夜行抄』の功績は大きい。

忘れてはならないことがあった。『百鬼夜行抄』の登場人物、ほぼみ同性愛者に見えるが、これが妖怪物の本編にとってポジティブに作用していて、独特の読感につながる。
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