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続々 物語をものがたる/河合隼雄(2003 要約






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続々 物語をものがたる/河合隼雄(2003 要約
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【 ドナルド・キーン/更級日記 】
●殺人が少なかった貴族社会 105
キーン ―― 平安朝には死刑に処せられた人がいなかった。いちばん重い刑は島流しだった。武士もいたし、武器もあったのに死刑がなかった。世界史で唯一でしょうね。
河合 ―― 一つは倫理観と美的感覚というものがほとんど重なっていたからということがあるんでしょうね。善悪というものをはっきり分ければ、悪は殺すべきなんですが、そこに美的判断が入ってくると、死刑というのはむずかしくなるのでしょうね。

(『続 物語をものがたる』から)
ガッテン ―― 仏教の影響でしょうか、都のなかでは殺人事件があったかもしれませんが、貴族社会では少なかった ――

●唯美性に司どられていた時代 ~平安朝の暗部 105
キーン ―― 当時の日本人の美的感覚はきわめて進んでいましたから、それを通さないで世界を見ることはありえなかった。つまり、いつもその美的感覚を通して世界を見ていたんです。しかし場合によって、それはよくないこともあったわけで、たとえば田舎に対する軽蔑感は、ある種の美的感覚の結果だと思います。田舎にいる人たちは人間ではないとか、『更級日記』の著者の父親は、田舎は子どもを育てるところではないといいきっています。田舎によいところがあるとか、田舎らしさなんかまったく認めようとしない。つまり美しくないと思っていたようです。だから仕事上、どうしても田舎にいなければならない場合は、なにか都を思わせるようなものを探すわけです、たとえば月。

●紙づくりの技術力が文学の礎だった 107
河合 ―― 当時、世界的に見てほかの国より紙が発達していたようですね。ヨーロッパは羊皮紙をつかっていましたから、聖書一冊つくろうとすれば羊を大量に殺さなければならない。日本で王朝文学が栄えたのは、紙がつかえたということも大きいのでは。
キーン ―― そうです。ヨーロッパで紙をつかうのは十六世紀になってからです。日本の紙は高価でしたが、質のいいものだったと思います。私は『奥の細道』の元の原稿を見ましたが、信じられないくらいにきれいでした。偽物ならわざと汚したり、虫食いをつくったりするので、これは本物だと思いました。


【 三田村雅子/我身にたどる姫君 】
●香りに秘められた思い 122
河合 ―― どの物語でも匂いは出てきますけど、この物語はとくに多かったように思いますね。
三田村 ―― 女性も亡くなる直前にかぐわしく香りだすんですね。それで、もう亡くなろうというときになると、ものすごくいい匂いが門のあたりまで匂ってくる。
河合 ―― 明恵上人の亡くなるときもそうですね。
三田村 ―― いわゆる往生するときに香りが漂うというパターンですね。
移り香の問題は、『源氏』の「宇治十帖」で、やはり誤解される香りとして何回も出てくるんです。『源氏』では、残っている匂いをどう解釈するかによって、その意味づける側の隠されたこだわりがつぎつぎ浮かびあがるように描かれている。
本来なら匂いは褪せていくはずなのに、それが時間がたつにつれてかえって強く感じられるみたいになっていく。

●暗闇《めかくし》のコミュニケーション 124
河合 ―― アメリカで『源氏』の話をしたんですね。それで、この時代の男女の関係というのは、だいたい真っ暗ななかで、だれか顔もわからない、結局は匂いとか音、触覚に頼って関係ができるんだ、といったら、アメリカ人が「まあ、すばらしい」と(笑)
白昼に顔を見たり話をしたりして、この人はすばらしいと思って、みんな錯覚を起こす(笑)
見たり考えたりすることに、重きを置きすぎているんですね。それで離婚が増える。
男女関係の本質というのは、ひょっとしたら『源氏』のほうかもわからない。



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