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EMDR 外傷記憶を治療する心理療法(2004)/フランシーヌ・シャピロ 市井雅哉・監訳


(エントリー/約9000字)


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EMDRでは脳内に保存されているトラウマの記憶にアクセスし、脳にその処理を促します。すると記憶が保存されていた期間の長さには関係なく、トラウマを解消することが可能だと分かったのです ―― フランシーヌ・シャピロ(『トラウマからの解放NHK
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EMDR治療モデルの説明 151
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「苦痛な出来事は、脳の中で他の記憶のネットワークから孤立して貯蔵されることがあります。そのために、学習が起こることが妨げられるのです。その古い題材は何度も何度も引き金となり、刺激を与え続けているのです。あなたが解決するのに必要な情報の多くは、あなたの脳のほかの部分、つまり分離したネットワークの中に存在しているだけなのです。EMDRによって処理を始めると、その二つのネットワークが結び付くことができます。新しい情報が思い浮かび、古い問題が解決するのです」


EMDR治療の効能 56
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EMDR治療の効果の能力は、個人がちょうど45分のREM睡眠中に、非常に長い一続きの夢を見る能力に類似している。( 中略 )EMDR治療の間、記憶の適応的な処理はダイナミックに維持される ――


●治療における8つの段階 80
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EMDR治療は8段階からなる。
第1段階 生育歴・病歴聴取
第2段階 準備
第3段階 評価(→トラウマとなっているイメージの強度、感情・障害のコンディション、自己肯定度などを「1~11」のような数値・レベル・段階で確認すること。ドクターがクライエントに価値判断を下す「評価」とは違う)

第4段階 脱感作(→眼球運動を繰り返し行い、ターゲットとした出来事に関わる“一次性”の機能不全、そのやわらぎ、揉み、平穏化を目的とする段階。完全なトラウマの解消は難しいので、それにはこだわらないこと)

第5段階 植え付け(→もとの否定的認知(過去・出来事をトラウマ化させている記憶のメカニズム、想起の運動、回想における癖)に代わるものとして設定された肯定的認知(完全な妥当性を有する肯定的で公平かつ公正な自意識のこと)を植えつけ、それを増強することで、クライエントの自己効力感と自尊心の高まりを呼び込みたい)

第6段階 ボディスキャン(→肯定的認知が十分に機能したら、クライエントは頭にターゲットと肯定的認知の両方を思い浮かべて、自分の身体を心の中で上から下までスキャンする。身体感覚の形で残っている緊張感がないかどうか確認する。もしあれば、それをターゲットとして眼球運動セットを行う)

第7段階 終了(→各セッションの終了時にはクライエントの感情が安定した状態に戻るようにしなければならない。なおクライエントには、次回セッションまでにあらたな苦痛や考え、感情やイメージが湧き起こることがあり、それは処理が進行している証かつ好ましい兆候だと必ず知らせておくこと)

第8段階 再評価


●必ずしも言葉で説明する必要はない 158
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クライエントが今まで受けてきたトラウマ治療では、はっきりと詳細をすべて言葉で明らかにすることを求められてきたかもしれないが、EMDRではそうしたことは必要ない。セッションの大半の時間は、起こったことについて話し合うのではなくて、苦痛な情報を処理することに費やされる。( 中略 )眼球運動を始めることによって加速された速さで開始され、クライエントの内的情報処理システムで成し遂げられる。


●EMDR治療計画チェックリスト 462
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口症状
口侵入的イメージ
□否定的認知
□期間
□最初の原因
口追加の事柄
□他の訴え
□現在の制限
口重要な人たち
□望ましい状態
□技能、必要とされる他のグループ


●1週間の日誌報告のための推奨される用紙 463
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クライエントの日誌を付ける宿題へのコンプライアンスは、以下のようなフォームを与えることで援助可能である。クライエントにある用紙を与えて、必要な作業の量を限定してあげる。クライエントは各欄に、報告すべき経験が起こったら、短い記述のみを書く。最初の列は、日付で、以下の列は、経験について数語を書く。
(1)日付
(2)引き金の出来事
(3)出てきたイメージ
(4)現れた認知・信念
(5)感情
(6)身体感覚とSUDレベル
この順に配置することで、次のセッションで出来事をターゲットにするときに必要なものと同じとなる。このことで、クライエントは障害を個々の部分に分けることを思い出す。何が起こったかを覚えておき、それを臨床家のもとに持っていくために必要なただの情報であることも知らせてくれる。
いったん、記述が終わったら、クライエントはセルフコントロール技法を使って、障害を解消する。


●EMDR手続きの概略
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EMDRの説明:(EMDRの説明方法はクライエントの年齢、背景、経敬および知識によって異なる。)
「トラウマが起こったときに、トラウマはそのときの情景、音、考え、感情と一緒に神経系の中に閉じ込められてしまっているようです。我々がEMDRで使う眼球運動は、神経系の鍵を開けて、脳がその体験を処理できるようにします。これは、REMと言われる夢を見ているときの睡眠の段階で起こっていることと同じかもしれません。眼球運動が無意識のものを処理する助けになるのです。覚えておいていただきたい大事なことは、治るのはあなた自身の脳の働きによるのであり、コントロールしているのはあなただということです」

細かい教示:にれからしばしば、あなたがどんな体験をしているのかを簡単にチェックします。できるだけはっきりと、何が起こっているのか教えていただきたいのです。変化が起こることもあれば、起こらないこともあります。どのくらい強く感じているかを0点から10点で答えていただくこともあります。それも変わることもあれば変わらないこともあります。これから起こることに『こうなるはずだ』ということは何もありません。ですから、それが起きるべきかどうかといった判断はしないで、できる限り正確に、起きていることを教えてください。起こることは起こるままにしてくだい。眼球運動をしばらくして、それからそのことについて話しましょう」

ストップ・サイン:「あなたがストップした方がいいと感じるときは、いつでも手を挙げてください」

適切な距離を確認する:「これくらいの距離やスピードで楽に感じますか?」

問題を取り上げる:「今日はどんなできごとについてやりましょうか?」

映像:「その出来事の最もひどい部分はどんな場面(映像)でしょうか?」

否定的な認知(NC):「その映像を思い浮かべたときに一緒に出てくる、今のあなた自身についての否定的信念を表す言葉は何でしょうか?」(クライエントには現在時制で「私は……」という話し方をしてもらう。現在抱いている、自分についての否定的な信念である)

肯定的な認知(PC):「その映像/事件を思い浮かべたとき、今ならあなた自身についてどんなことを信じられたらよいと思いますか?」(PCは、自分についての現在の望ましい信念でなければならない)

VOC(PCのみについて):「あなたがその映像/事件を思い浮かべたとき、それ(肯定的認知を繰り返す)は今あなたにとってどれくらい本当の感じがするか、1から7までの尺度で言ってください。1は完全に間違いの感じで、7は完全に正しい感じです」

感情・感じ:「その事件やそれらの言葉(否定的認知)を思い出すと、今どんな感情が出てきますか?」

SUDs:「0~10の尺度上で、0は因っていない、10は考えられる限り最も苦痛な状態です。あなたは今どれぐらい苦痛を感じているでしょうか?」

身体感覚の場所:「それ(その苦痛)を、あなたは身体のどこに感じますか?」

脱感作:「その映像と、否定的な言葉(否定的認知を繰り返す)とを思い浮かべて、身体でそれを感じている場所に注意しながら、私の指を目で追ってください」
 1.眼球運動をゆっくりと始める。クライエントが楽にその運動に、ついてこられる範囲でスピードを速める。
 2.12往復ごとに、あるいは目に見える変化のあったときに、「そう、いいですよ、その調子」と言う。
 3.クライエントに次のように言うことが役に立つ(特に、もしクライエントが除反応を起こしているときには)。「そう。もう昔のこと。ただ感じてください」(速い列車のたとえも使う)
 4.1セットのEMの後、クライエントに次のように言う。「それをいったん消してください」「それを追い払って、深呼吸してください」
 5.「今、何がありますか?」あるいは「今、何に気づいていますか?」と聞く。
 6.クライエントが動きを報告したら、「それと一緒にいてください」(クライエントの言葉を繰り返さずに)と言う。肯定的認知の植え付けへと進むには、クライエントの報告はSUD尺度で0あるいは1でなければならない。

肯定的認知の植え付け(望ましい肯定的な認知と、もとの記憶・映像と結び付けながら):
 1.「先程の言葉(肯定的認知を繰り返す)はまだぴったりしていますか。あるいは、何かもっとしっくりくる肯定的な言い方がありますか?」
 2.「もとの事件とその言葉(選ばれた肯定的認知を繰り返す)を思い浮かべてください。1(全くの間違い)から7(全く正しい)までのうち、どれくらい正しい感じでしょう?」
 3.「一緒に持ったままで」。クライエントを1セットのEMに導く。「今、もとの事件について考えると、それ(肯定的陳述)は、1から7までの尺度上でどのくらい正しいと感じられますか?」
 4.VOC:1セットが終わるごとにVOCを測定する。クライエントがたとえ6あるいは7と報告しても、もうそれ以上強まらないところまで、EMを続けて強める。ボディスキャンに移る。
 5.クライエントの報告が6以下のときには、適切さをチェックし、ブロックしている信念を扱い(もし必要なら)、さらに再処理を続ける。

ボディスキャン:「目を閉じて、その事件と肯定的認知に集中して、頭の中で身体全体を観察してみてください。何か感じている場所があれば教えてください」。
もし、何か感覚が報告されたら、EMを行なう。もし肯定的・快適な感覚だったら、その肯定感を強めるためにEMを行なう。もし不快感が報告されたら、不快感がなくなるまで、再処理を行なう。

終了(説明):「今日私たちがした処理は、セッション後も続くかもしれません。あなたは新しい洞察、考え、思い出あるいは夢に気づくかもしれないし、気づかないかもしれない。もしも気づいたら、あなたが体験していることに意識を向けて、(あなたが見ているもの、感じていること、考えていること、そしてその引き金を)大体でいいですから、ちょっと頭に留めて、日誌につけてください。この新しい題材については、次回で扱うことができます。もし必要を感じたら、電話をかけてきてくださって構いませんよ」


●過去の出来事を同定するための
 フロートバックテクニックの手順 469
(トラウマ体質になるきっかけとなった記憶の検索とケア)
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 機能不全の基盤を作る原因となった早期の記憶は、現在の出来事の前に処理されるべきである。

 William Zangwill(Young,Zangwill,&Behery,in press)が訓練の目的のために用意したEMDRの手続きは、Watkins and Watkins(1997)によって論じられた「感情の懸け橋」と「身体感覚の懸け橋」を増す。これは、情報検索の多様な経路(感覚的印象、認知、感情そして身体感覚)を一つの手続きで結びつける。
「さあ、 ●●●●●(各クライエントに適切な単語を)の映像を思い浮かべてください、そして、(クライエントの苦痛となる映像と否定的認知を繰り返す)という否定的な言葉を思い浮かべてください。どんな感情が浮かんでくるか、それらを身体のどこに感じるか気をつけてください。そしてただ心を人生のより早期の時代に漂い、遡ってください。何かを探そうとしないでください。ただ心を漂わせ、遡らせて、心に浮かんだ、あなたが同じようなことを経験した最初の場面を教えてください。●●●●●(否定的認知を繰り返す)を考えて。●●●●●(上の感情を繰り返す)を感じて。あなたの●●●●●(クライエントが感情を報告した身体の部分を繰り返す)に。
 →クライエントの反応を書き留める:


●資源の開発一資源のさまざまなタイプの探求 474
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達成した経験とイメージ
「あなたが●●(たとえば、強い、安全、自信がある、穏やか、感情に耐えられる)と感じている時のことを考えてください。より●●(たとえば、勇気、自己信頼、柔軟性)を持って行動できている時のことを考えてください。その望ましい特質や感情を得られるのはどのような経験ですか? あなた自身の部分で、あなたが頼りにできる自分がありますか(たとえば、賢者の自己、専門家の自己、戟士の自己)? 将来の、自分自身が望むような特質か資源を持っているイメージを思い浮かべることができますか?」

関係の資源(モデルと支持的人物)
「あなたの生活上の人物を考えて、今でも昔でもいいですが、誰かこの特質を持っている、活用している人がいますか? あなたの側にいて、励ましてくれたり、コーチをしてくれて、あなたが●●(たとえば、より強い、支えられている、より自信のあるなど)と感じるのを援助してくれる誰かを考えてください。友人、親戚、先生、養育者、治療者について考えてください。誰でもいいので、この特質を備えている人、あなたにとってのモデルの役割をしているか、できそうな人を考えてください(たとえば、有名人、本、映画、テレビ、アニメの登場人物)。あなたの人生で違いを作り出す人を考えてください。魂の先導役、希望や強さを与える人やものを持っていますか? 動物やペットで、こうした肯定的な感情や特質と結びつくものがありますか?」

比喩やシンボルの資源
「あなたが●●(すなわち、穏やか、愛されている、つながっている、守られている、包まれている、平和である)と感じる他のイメージ、シンボル、比喩を考えてください。肯定的なイメージヤシンボルで、あなたの芸術作品、夢、空想、イメージ誘導の実習で出てくるもの(たとえば、強くて、柔軟性のある木)を考えてください。」

資源の開発-より多くの情報へのアクセス(一度にひとつの資源イメージ、連想を扱う)
「その●●(例えば、経験、人、シンボルなど)を考えるとき、何が見えますか?何が聞こえますか? どんなにおいがしますか? このイメージか記憶に焦点を当てた時、どんな感情に気づきますか?こうした感じを身体のどこに感じますか?」

映像:        
音:
感情:
感覚の場所:
におい:

資源のチェック
「その●●(資源のイメージの記述を繰り返す)に焦点を当てて、●●(資源の音、におい、感覚、感じなどの記述を繰り返す)に気づくとき、どのように感じますか?」
(その後、資源が実際、難しい(目標の)状況に対処するのにクライエントの役に立つかどうか以下のように尋ねる)
「●●(目標の状況)に焦点を当てて、●●(イメージと感情の記述を繰り返す)はどのくらい真実、どのくらい役立つ感じが、今しますか? 1が全く間違いか役立たない、7が完全に真実か、役立つだとしたら」 →VOC:1   2    3   4    5   6    7

資源の反復
「●●(イメージの記述を繰り返す)に気づき続け、●●(感情、感覚、におい、音などの記述)に気づき続けましょう」
(イメージ、音、感覚、感じを語順を変えたりしながら繰り返す。クライエントが否定的な連想や感情なしに資源に注意し、つながり続けられるかどうかチェックする。クライエントが否定的な連想や感情を報告したら、その資源では続けない。他の資源でやり直すことを考える)

資源の植え付け
「さて、●●(イメージ、関連した感情、感覚のクライエントの正確な言葉使いを繰り返してください)に焦点を当て続けながら、私の指(もしくは、音、光、クッビングなど)を迫ってください」
(そこで、臨床家は短めの両側性の刺激を、各セット、6-12往復で与える。各々の両側性の刺激の後、全般的な質問をする)
「今何を感じたり、気づいたりしていますか?」
もし、クライエントが否定的な連想か感情を報告したら、先に進めたり、他の資源でやり直す過程を始める前に、否定的な材料をイメージの中で、入れ物(たとえば、箱、金庫)などに入れる。

資源の強化:言語的手がかりや感覚手がかりとの結びつき
「この資源と結びつきながら、さらに進めていくことを想像しましょう」
(達成経験なら)「その経験を思い出すとき、自分について今言える最も肯定的な言葉は何でしょうか?」
(モデルや支えてくれる人物なら)「その人があなたの側に立っていて、あなたが必要とするものを与えてくれていると想像してください。彼か彼女はあなたに言うべきこと、あなたが聞くべきことを正確にわかっていると想像してください。この人物と一体化していき、この人物の体内に入ると想像してみてください」
(比喩的かシンボルの資源なら)「この資源を自分の手の中に持っていると想像してください」「このイメージか感じに包まれていると想像してください。この感じを呼吸と共に吸い込んでみましょう。あなたの体の中にこの肯定的な特質を感じる場所に気づいてください」(両測性の刺激のセットと共に、処理が援助的になる限り続けていく)

将来の鋳型の構築
「将来あなたが●●(前に見つけてある難しいターゲット状況)に直面する時に、この資源を持っていると考えてください」

(達成の経験なら)「効果的に対処するのに必要な●●(例えば、勇気、強さ、境界)を持っていると想像してください。その場面で●●(例えば、自信、平和、地に足のついた感じ)を感じていると想像してください」

(モデルや支えてくれる人物なら)「この難しい状況に直面し、●●(例えば、支えてくれる人や関連した資源の名前)とつながっている感じを想像してください。あなたにとって、どんな感じなのか気づいてください。あなたの資源となる人があなたが聞くべきことをちゃんと言ってくれているのを聞いてください」

(比喩やシンボルの資源なら)「あなたの資源をまさにあなたが感じる必要があるように感じてください。あなたが経験する必要があるようにその資源を感じてください」(両測性の刺激の短いセットと共に、処理が援助的である限り続けていく)

(選択された資源と一緒に、植え付けと将来の鋳型が、目標状況に対処できるようになるかどうか査定する)「●●(目標状況)に焦点を当てて、●●(イメージと感情の記述を繰り返す)はどのくらい真実、どのくらい役立つ感じが、今しますか? 1が全く間違いか役立たない、7が完全に真実か、役立つだとしたら」
VOC:1  2   3   4   5   6   7
 この過程は、クライエントが強めたいその特質か資源の各々に対して繰り返す。

資源の開発と植え付けの使用
先のセッションで、資源が植え付けられたか、クライエントの日誌でフィードバックを探すなどして、チェックするとよい。
クライエントが第2段階(トラウマ焦点のワークの準備)ができたら、先ず、トラウマの材料にアプローチするのに必要な資源を持ち出し、(両側性の刺激で)強めることからセッションを始めることができる。
トラウマ焦点のEMDR再処理中に、臨床家は前に植え付けられた資源を、「自発的な処理が治療的な目標を達成するのに不十分な」時に、Shapiroが「新しい情報か新しい見方を導入する」戦略と定義した、認知の編み込みとして、用いることが可能である。


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WHOは2013年にEMDRを「患者への負担がもっとも少ないトラウマ治療」として公式に推奨した。いま世界中のトラウマ治療・臨床の場が変わろうとしている ―― (『トラウマからの解放NHK
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sketch ――

「記憶=トラウマ」ではない。
トラウマは状態・症状・反応のことをいうみたいだ。

「記憶」とは何か?

無理のない状態、自然で漂っていて浮かんでいて、アクセスしようとすれば滞りなく行えて、必要な情報や映像が脳裏に浮かぶ。そういう情報群 ――
図形や肖像、体感や五感に結び付く事柄が計り知れないほど貯蔵されている非限定的かつ非物質的、ひろがりだけがあるような有機的な空間 ――

そう言ってみるが的を得ていない。
記憶を定義するなんて今のおれには無理だけど、それなりに機能している記憶というのは統一的(山も降りもところどころの褪せやはがれもある、自然の秩序のような意味での統一)な状態・空間・系にあるっていうことは、なんとなくわかるし、そう感じる。

トラウマはその記憶の特定の箇所が不健全に(機能不全的に)硬化したり、熱を帯びていたり、焼け爛れていたり、傷だらけだったり、千切れていることを指している、と思う。

EMDRはトラウマ解消のために編み出された。
「眼球運動による記憶の再処理によって脱感作を期待する」方法論・実践法で、これは噛み砕いていうと「ある記憶を思い出すとき、トラウマを負っている人は“怖さや怖れ、不快感や怯え”のような感情・イメージが沸きあがるが、記憶には色や匂い、意味は付属していない/それらはくっついているように思い込んでいるだけで、ほんらいはバラバラなものです。なので、記憶と感情の不幸なセット(過去のある出来事と、ストレスや抑圧、恐怖という心身の状態)を解消させ、ほどき、解き放って ―― あなたが捉われて、傷ついて、傷み悩んできたその思い出を、思い出しても怖くならないように ―― たんなる記憶の一つとして眺められるようにしませんか? EMDRはその手伝いができますよ」という呼びかけ。


フランシーヌ・シャピロさんはベトナム帰還兵のトラウマとレイプなどで傷ついた市井の人々の後遺症がそっくりな点に着目し「トラウマというのは戦争など激的といわれる体験をした人に限定のダメージではなく、実はは一般社会にもありふれているのではないか? そして悲しいことに深く研究されていないので、多くの人が苦しんでいるのではないか?」と考え、EMDRを考案し、体系立てた。


「トラウマを払拭する→記憶そのものを消去する」というパワフルでマッチョな対処法ではない。
というか、こういう考え方はおれみたいな素人には当たり前であって、カウンセリングにしろ行動療法にしろ、フロイトやユングのようなヨーロッパのアカデミズムを基礎にした心理療法・意識研究は、回復=思い出さなくなる→トラウマになった記憶を消せるって考えてる、ように思っていた。
専門家は違うかもしれないが。


フロイトが精神の深みに切り入ったのが20世紀の後半か?
EMDRの歴史はまだ若い ―― ようで、ナム戦以降から本格的に研究されたとすれば、30年以上は経っている。


まずさっきも書いたように「トラウマと記憶は違う」ことすら、ようやく明確に感じられた。
記憶がトラウマ化するのでもない。
木が燃えて炭になる、のと違う。

記憶=世界で、トラウマ=火事・戦時、みたいな。

山が火事だとしたら、火事を起こしているのは炎で、
 山=記憶
 火事=トラウマ
 炎=トラウマを引き起こす原因→先天的な心身の体質、後天的に身に付いた癖、性癖、傾向、性格、
となる。

火事をどうにかしようとしたら、火事をやっつけるなんて言い方じゃ抽象的に過ぎるし、山全体をいきなりどうにかなんて人の力じゃまず無理で、つまり炎をどうにかしなきゃならない。
トラウマもおなじこと。
こいつをどうにかしようとしたら、トラウマを引き起こす内因・外因を特定して、そこをケアする必要がある。

おなじだけの炎を焚いても、山によっては火事にならない
→おなじ体験をしても、人によってはびくともしない
ちいさな火でも火事になる山がある
→燃えやすい山がある(こういうと、記憶にも体質があるみたいな感じになってくるな……
 →もうすこし詰めて考える)
→燃えやすい気候や季節がある(これは外因)


EMDRは一つ一つ見つけ、さかのぼって、また一つ一つ見つけていこうとする。
体のケアも並行してやっていきながら。

眼球運動をうながす施術者の指先は、クライエントの心をなぞり、なで、ささくれを癒すように、なだらかにするように、裂け目を溶かし合わせる半田ごてのように作用する ―― そんなイメージ。

今日もざっくりしたメモ。
これはレビューでもノートでもなんでもない。
思い付きを書いているだけ。

それと、文中で紹介されているトラウマ対処の諸メソッドは、「プロに訓育されたカウンセリング・施術のプロ以外、誰かにやったり、試したりしては絶対にいけない」と、この本に書いてある。
おれは自分自身に対する工夫と、誰かと話しているときにメンタルケアについて思い出した場合、おれのような素人が会話のなかでどのように弁え、なにをするべきではなく、どのように距離を取っていたらいいかを学ばせてもらっている。
浅知恵だとか生兵法は大火傷の原因となるし、人を傷つける ―― なんて当たり前の話だが、EMDRに限らず、あらためて肝に銘じる。



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