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「つながり」の精神病理/中井久夫(2011)

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●家族の単色化とハプニングの効能
進んでか、しらずしらずの間にか、病人の家族が孤立するのは、第一にきょうだい、おじおば、いとこからの孤立である。この結果家族は孤立するだけでなく単色化する ―― その家族の解決法では解きえないような問題に対しても、その無効な解決法による努力の反復が起こる。 40

孤立した家族は、また、「ハプニング」が乏しいと言うことができる。 41

ハプニングは( 中略 )トリックスターの働きをして、家族の、患者を犠牲にして成り立っているホメオスターシスを破り、家族全体を新しい平衡への旅に出させる力があると私は思う ―― 42

現在、システムについて考えている学者とか数学の人にいわせると、生命というものは絶対の「必然」と絶対の「偶然」の中間の領域、「ゆらぎの世界」に属しているんだそうです。 84

偶発的な事態というものをどう生かすかということ ―― 84

驚きを伴なった意外性のあるものは、われわれを生かしてくれる大きなもの ―― 84

偶発事の活用によって、家族は豊かになり、変貌する。( 中略 ―― 家庭の話題は偶発性によってはずむのではないか)そして家族が永遠に不変のものではなく、新しい人を、新しい事態を迎え入れ、古い人を見送り、古い事態を捨て去るからには、その契機としても、いっそうこのことがなくてはならない。 42

良し悪しはともかく、偶然としか言いようのないものをどうつかまえ生かすかによって人生の軌跡が決まる( 中略 ―― ハプニングが乏しい→精神的な貧しさの元凶になりがち) 42


●秘密に熟す心
意味ある面接になるためには熟成(心や言葉、イメージ)が必要なので、面接が終わってすぐ( 中略 ―― 牧師、家族、友人)に話さないよう確認(クライエントだけではなく、身近な人たちにも)し、合意しておくことが大切 ―― 82


精神健康の基準について 237
健常者ということばがよく使われているが、実際にはそういう者を定義することはできない。 237(精神健康の定義は)精神健康をあやうくするようなことに対する耐性として定義するのがよいのではないだろうか。 237

『中井久夫が挙げる15の耐性』
-----------------------------

1.分裂する能力、そして分裂にある程度耐えうる能力
 「人格は対人関係の数だけある」という考え方。
 「あらゆる人間関係に対し統一された人格がある」者の精神健康のほうが危ういのではないか、という指摘。

2.両義性(多義性)に耐える能力
 父であり、夫であり、社員であり、挫折者であり、保護者であり、掟であり、壁であり ――

3.二重拘束への耐性 
 「恋人を愛している」「恋人からの電話をはやく切って眠りたい」

4.可逆的に退行できる能力
 赤ん坊をあやす母親、動物に子供っぽく声をかける成人男性
 (統一、成熟、人格的・常識的な「私」が)出ずっぱりでは人は持たない。
 かつ、退行した精神状態からすぐに戻れること ――

5.問題を局地化できる能力
 「私はどうしてこの職業を選んだか」「この伴侶と家庭を作ることになったか」 ―― 一般的に必要充分の理由なんかない。
 問題を一般化すれば、形は堂々としたものにはなるが解決は遠のく。
 特に自分に関する問題では ――

6.即座に解決を求めないでおれる能力、未解決のまま保持できる能力
 葛藤があることはすぐに精神健康の悪さに繋がらないどころか、ある程度の葛藤や矛盾、いや失意さえも人を生かすことがある ――
 「迂回能力」、「待機能力」とも深い関連がある。

7.いやなことができる能力、不快にある程度耐える能力
 「後回しにする能力」、「できたらやめておきたいと思う能力」、「ある程度で切り上げる能力」も関連能力として大事 ――

8.一人でいられる能力
 「二人でいられる能力」も付け加えたい。

9.秘密を話さないで持ちこたえる能力
 「嘘をつく能力」も関連している。
 (嘘をつかないではいられないとしたら、それは“びょーき”だが)

10.いい加減で手を打つ能力
 これは複合能力で「意地にならない能力」とか「いろいろな角度からものを見る能力」、特に相手から見るとものがどう見えるかという仮説を立てる能力 ―― 「相手の身になる能力」 ―― が関連している。
 「若干の欲求不満に耐える能力」も関わりがある。

11.しなければならないという気持ちに対抗できる能力

12.現実対処の方法を複数持ち合せていること

13.徴候性へのある程度の感受性を持つ能力
 身体感覚、特に「疲労感、余裕感、あせり感、季節感、その他の一般感覚の感受性」を持つことと同じ。それらは徴候として現れるからである。
 すべての能力は人間においては対人関係化するので、対人関係を読む能力は徴候性を感受する能力と関係している。
 「いま、相手が親密性を求めているかいないかが分かる」こと ――

14.予感や余韻を感受する能力
 この世界を味わいのあるものにする上で重要な能力。
 たとえば芸術作品の受容・体感がこの能力を育み、野生の馬である「徴候性」と折り合いをつけられるようになっていく。

15.現実処理能力を使い切らない能力
 あるいは「使い切らすように人にしむけない能力」。
 多くの統合失調症者の発病、再発は、彼らが現実能力を使い果たした時点で起こりがち。

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すべてがおおむね円滑な時には、自我と外界、自己と他者との区別は問題にならなくて、しかも危機感どころか、問題になる時よりもずっと安全が保障された感じがあるだろうと思う。(「兵庫精神医療」六号 1985年) 248


●熟練者《ベテラン》への里程標《マイルストーン》 321
さる高名な外科医が書いておられた。
それは外科医の一生ということである。

第一期
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おっかなびっくり、おずおずメスを使い、自信が持てない。

第二期 ~ 離陸の段階
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すぐれた先輩について勉強しているうち、だんだん「手術の力」やその凄さがわかってくる。力もついてくる。

第三期 ~ 運命の分かれ目
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ひょっとしたら天才では? メスで治せないものはないと思う。実際、人をあっと驚かすような大手術、斬新な手術をやってみせる。
ところが、この段階で思わぬ失敗をしがち。
腕が冴えているだけにエラーも大きい。
誰でも臆病になり、大抵は研究に逃避する。

第四期
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失敗で踏みとどまると、手術でなく、外科全体が見えてくる。
手術もその一つの手段として再確認・再定義され、適応、不適応やタイミングを取れるようになる。

第五期
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社会的・心理的側面まで見えてきて、治療を構想し、実践できるようになる。
(ここまで達する人はなかなかいない)


●勉強の仕方 324
・ハンドブックの丸暗記は意味がない。
 (ただ、知識は有用だ。一生に一度出会うか出会わないかの病気を知っているかどうかが決め手になるケースがある)
・講義のはざまに落ちている学問の勉強を特に心がけたい。
・定式が身に付いているかどうか ―― 演奏家に楽譜が身に付いているように。
 たとえば応急処置、手術その他の手技、処方箋などは、患者のまえで本を確認してもよい。むしろ、うろ覚えで実践してはいけない。
・症例に対応させ、分岐・類似・対比 ―― 既知に照らし合わせることによって想像力や情報量を増大させる。これによって一体験の深さ、生産性、印象の度合いがあがる。
・そのために「患者名簿」をつくる。詳しく書こうとすると長続きしないので、名前と年齢とカルテ番号と、その患者を思い出すキー・ワード一つ、二つでよい。
・人間は七つ以上の分類をうまく使えないらしい。この自然限界も念頭に置きながら。





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