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あなたがピアノを続けるべき11の理由/飯田有抄





やめたっていい。また戻れば。
指が動かなくなっている?
一度やめて戻るくらいなんだから、まえよりも集中して稽古するでしょう。そのくらいのブランクはすぐに取り戻せる。


●「心」の字
心は変わりやすい。

●人生の貯金
忙しいときは人生の貯金をしよう。

暮らしは低く、思いは高く


ルイ・レーリンク
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ピアノレッスンには、こう弾かなきゃ正確じゃないとか、上手じゃないからダメとか、コンクールでよい結果を出さなきゃいけないとか、そうしたことは中心じゃありません。
その人自身が心の中に持っているものを、ピアノを弾いて音として表現しようとすることが大事です。

心の哀しみや喜び ―― 楽譜に書かれている音楽を、読書するように紐解いていくことで、豊かに広がる感情です。

そこに正解や不正解はありません。


いまでも僕は自分のリサイタルの本番直前に、会場近くのスーパーに出かけて、買い物をするお婆さんや、ネギを入れた袋を持って行きかう家族連れの人々の中に身を置いて、その人たちの心にも届く演奏をイメージするようにしています。そのお婆さんが足を止めてくれるような演奏をしたいな、と思うのです。 80


黒田亜樹
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ヨーロッパの人々はピアノや音楽を学ぶことをどのように捉えているかというと、人間としての知識や教養を高めるものとして考えているのです。読書と同じような感覚です。将来その道のプロになるかならないか、といった問題はやっているうちに決まっていくことです。「将来学者にならないのなら、本を読むのは無駄だからやめなさい」と言う人はいません。( 中略 )自分を高めたい、そして文化を担いたいという一心で、みなピアノを習っているのです。 88


古屋晋一
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ピアノを自分で「弾く」方が「聴く」時よりも交感神経が活発化する( 中略 )交感神経が働くと、心拍数があがります。人は何か楽しいことがあるとドキドキしますが、この時脳の中では、ご褒美をもらった時に反応する報酬系と呼ばれる回路が活動しています。( 中略 ― 自分で演奏する場合は)交感神経が活発化し、心拍数もより大きく上がるのです。 109

ピアノを弾くことが他の能力の向上につながる( 中略 )ひとつはIQの向上、もうひとつは外国語の学習能力です。言葉の抑揚に対応して脳の活動が変化していたのは、一般の人よりも音楽家の方が著しいのです。 110


林達也
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レッスンや試験で評価され、教わったことを完璧に再現し、技術が安定している音楽エリートだからといって、よい演奏家になれるとは限りません。音楽は難易度や点数を基準にして作られるものではないのです。比較や競争のなかから選りすぐられるものとも違います。
本当にいい演奏とは、聴く人をハッとさせるような驚きや輝きに満ち、イマジネーションに溢れた豊かな音楽をするということです。音の美に対して想像力のたくましい人が、聴く人を魅了してやまない、本当にすばらしい演奏ができるのです。
ですから、難しい曲が弾けない、コンクールでいい成績をもらえないからといって、自分がピアノを弾く意味がないと感じるとしたら、それは間違いです。

効率よく訓練を積み重ねたからといって、簡単に人の心に訴えられる演奏ができるとはかぎらない。
競争社会における実績や、効率化といった言葉に惑わされることなく、音楽と向き合い、作曲家の心、自分の心と向き合いながら、自分の想像の翼を広げること。それは専門教育を受けるか受けないか、プロになるかならないかといったこととも、本来無関係なことなのです。日々の生活を豊かに送るために、音楽する心を持ち続ける。それが、あなたがせっかく出会ったピアノを続けて行くべき理由なのです。 121



sketch ――


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挫折からの復活 ~ひとつのマイルストーン
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原因(事故、トラウマ)→
時間、流れ、運び、展開→
倒れる、息も絶え絶え、休息期→
きっかけ(だいたい、外からの働きかけ、出会い、再会、出席)→
再生、始動、復活

焦ると、余計に、かならず遅れる


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書き物の反省 ~五年間のメモ
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基礎がない
知識量、頭の良さじゃ、他の作家と勝負にならない

あのときは、なぜうまくいったのか?
(失敗だけじゃなく、成功も反省し、分析する)

 焦ると遅れる
 本物の挫折はかならずや肥やし
 おこられた→ありがたい→成長や刺激(あるいはハプニング)→チャンス→意識・掴む・逃がさない→変化

自信はない。技術も知識も経験も・・・・・
でも、なんとなく離れたくなくて、もうすこし伸びたい、できれば輝きたい ―― 自分として生まれてきてよかった、ありがとうと感謝したい ―― 受けとった愛情やチャンスを他の誰かに渡したい ―― 開放される自分 ―― その姿がありそうで、翳んでるけど、気がするので、ここにいる。

・「できない」には理由がある
あてをつけて、分析して、解体していけばいい。
できない→なぜ?→発明→工夫→発明→前よりよくなってる

・ない時間でいかにやるか?
・工夫が伸びになる。更新、変化、ポジティブな。必然的な変態→時のながれに添った流線型

・構造的×やみくも
やみくも ―― 体力、力まかせ、勢い、一度止めたりしばらく離れると再演不能になる
(指で覚えるまで弾き込む、暗譜のために曲を丸暗記する

構造的 ―― 歴史、脈絡、必然性、流れ、紆余曲折の果ての自然体
(音楽的な理解に基づいた効率的な方法で練習する。無理にやらない。無理すると怪我をする。→弾けないのはどうして?→機械的に練習するより身につくし、音楽的な理解が深まる→フィジカルすぎるより、かえってよい→反復練習をし続けなければキープできないテクニックより、体に沁み込む
(理論の勉強をする→この次にはなにが来るのか? 語法や構造、ルール→作曲家の時代や様式を学ぶ→音の流れが理論的にわかるようになる→曲を指で覚えるのではなくて、音楽として覚えられる→
(音の横の流れ(旋律)と縦の響き(和音など)→練習時間の短縮→作曲家の作品の深い理解と表現につながる

・やみくもから構造的なフォームへの移行期
若くて時間がたっぷりあった時間は終わった。時間や体質の限界が見えてきてる。
質を高めて、集中して取り組む時期になっている。

・やみくもにやらなくなれば、おちついて、ゆったり、じっくり→
音楽や小説の本質を味わう。咀嚼する。よく噛んで、反芻して、そういうリズムの文章を書く。
取り組み方もそう。

・感動した作品を何度も受容する

・『いつか自分も ―― 』というイメージ、願望、モチベーション
→真似、理解、再現・再演、取り入れる、使う、下敷きにする、刺激にする、
シンプルに憧れでいい。取り込んで、その形になってしまいたくて、浴びるように。
浴びて浴びてとことん浴びて、その果てに滲むものがある。
→ドリップ
→それでもなお消えない固有性














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Comments 2

録主

九鬼さん、こんばんは。

『あなたがピアノを続けるべき11の理由』は、いま手元にないのですぐには読み返せないですが、技術系・音楽解釈系のアドバイスより芸事・稽古への心構えが解かれた内容だったと思います。

ピアノ界で名をあげるため(コンクールで受賞するため)のレッスンと、自分自身の演奏をする・作曲者の心模様を再現するピアノの稽古とはイコールでない、という証言がたくさん載ってた気がします。
前者が大多数の世界(業界)で、後者を行く孤独感に苛まれたとしたら、励ましをくれる本でもあったかな。

チェンバロ、素敵ですよね。ぼくは和歌山で夏の終わりに聞きました。音楽家の山名夫妻が催した、チェンバロとクラヴィコードの『バッハマニア』というコンサートでした。耳を澄まさないと聞き取れない音色のちいささ、繊細さに感激しました。禅の呼吸、垂直の指ですね。


2015-11-24 (Tue) 22:46 | EDIT | REPLY |   

九鬼 久典

今週までに「11の理由」を返却せにゃならんのんですが、他の読者の書評をうかがいたくて拝読しました。スポーツ選手のキャリアパスにも似て、演奏家の世界も甚だ厳しいものがありますね。
古屋先生の著作をきっかけに本書を紐解きましたが、亜樹さんのコメントがしっくりきます。

現在は強弱で表情が出せないチェンバロ曲に凝ってます。禅の呼吸のようで、指は垂直。ロマン派の葛藤を離れるのも一興。

2015-11-24 (Tue) 11:33 | EDIT | REPLY |   

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