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詩集工都/松本圭二



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新しい雨よ
おまえが触れるものは総べて
死にゆくものだ
おまえは一滴の記憶も持たず
この地に染み入ればいい  61


鉄の草木が枯れる
天国という響きのする地下の駅から
おまえは地上へ出ることができない
箱のなかの闇を運ぶ
おまえは
孤独な溝の
重なりなのだ 85



二人目は前方から来る  160


移民船ブラジル
そのスクリュー
その回転
その時
逃げ去れる
隔たれる
沈没だおまえら
悲しい
主題の時代が
おまえらを小説にするだろう
そんな残酷を
思い出すように   188


それはビスタサイズをした夢だ
ばかやろう   201


おまえの名前
ゆっくりと
終わる   254


飛び散ったものに眼を汚されていると
火の輪郭が
“わたしは闇だ”と
揺らぎながら
伝えている
おまえは地球ではないので
回りながら回るのは苦しいことだろう
すると
地を這う自動車の視線に切りかわり
この平面を愛するならば
“誰にも闇を吸う権利は無い”と
前進する

低所とは物が営むところ
速力とは死に行く鉄が観る幻影なのだ   259



“私は彼の名が壊れて行く時間をすでに生きた”  267

一人はそこにいる
いるだけで間違っている
彼の存在を木や石が否定する
だが退くことが許されていない
この屈辱に耐えるために
彼は話はじめる   276


私は覚えている
火の暦がおまえを記憶した
そして忘れた
すぐに思い出すだろう
“世界地図はケロイドのように爛れている”
“共有とは彼にとって最悪の劇を思うことだ”
いくつもの小さな爆発ののちに
曖昧な土煙の向こうから大陸が接近して来た
この直線の夢を
頽廃を
私は識る
私は忘れた
“激化した臓腑が水に背く”
裏面の微崩壊か
“この不自然を愛するならば”
おまえは不変である
幸いなことだ
分からない
分かりすぎる
重なり合うものの悦び
剥がされてゆくことの悦び
私は懐かしい   344


夜は匂いを放ち
夜になろうとしている
今夜は悲しみの集まりがあるが
遠すぎるから
彼もでかけはしないだろう   360



・【 著作一覧 】松本圭二
http://bibobibobibo.seesaa.net/article/313953560.html


・ポエムの虎 2003 秋吉台現代詩セミナー/「ポエムの虎」実行委員会編
http://bibobibobibo.seesaa.net/article/333034107.html








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